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種生物学会 - The Society for the Study of Species Biology

Last Updated on 22-11-2017

【連絡】第6回 種生物学会片岡奨励賞 選考報告

 選考委員会は,推薦のあった候補者の研究業績および種生物学会での活動について,慎重に調査審査し,最終選考会議を10月31日に京都大学でおこないました。その結果,選考委員の全員一致で,以下の2 名に片岡奨励賞を授与することを決定いたしました(表記は五十音順)。なお授賞式は,12月8日(土)の種生物学会2012年度シンポジウムの懇親会にて行います。

  ・荒木 希和子 (京都大学)
  ・布施 静香  (兵庫県立人と自然の博物館)

片岡奨励賞選考委員: 井鷺裕司・川窪伸光・西脇亜也・吉岡俊人


【受賞理由】

荒木希和子 氏 (京都大学)
 花・種子を介した有性繁殖と地下茎などによる栄養繁殖の両方を行うクローナル植物は,植物の個体群生態学ならびに繁殖生態学において大変に興味深い植物群である。荒木氏は,クローナル植物であるスズランを対象として,その繁殖様式と集団維持機構を進化生態学の視点から解明してきた。実は,クローナル植物の野外研究には,多くの困難が存在する。なぜなら,植物体がクローナルであるが故に,個体性の認識が難しく,「集団の空間的な広がり」や「個体レベルの適応度」の評価が困難だからだ。このような問題に対して荒木氏は,種子繁殖の特性や地上シュートのマーキングとその追跡調査を丁寧に緻密に行い,野外生態データを集積するとともに,マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析実験を行い,スズランにおける個体の識別法を確立した。その上で,上記の結果を統合して評価するために数理モデルを使った数理解析を行いスズランの繁殖様式と集団維持機構を解き明かした。これらの丹念に自然の実態を探求した研究成果は,クローナル植物の種分化の新たな実態を明らかにした点で学術的に高く評価できる。なお,種生物学会では,シンポジウムの企画・講演,ポスター発表を積極的に行い活発な学会活動を展開し,広く種生物学分野全体の発展に貢献している。


布施静香 氏 (兵庫県立人と自然の博物館)
 植物の系統分類学の近年の発展にはめざましいものがあり,その背景には分子系統解析がある。布施氏の研究成果は,まさに分子系統解析に基づく最新の分類学的成果である。しかし注目すべきは,布施氏は,その研究過程で,野外での生態観察と大量の植物さく葉標本に基づく解析をも丹念に続け,その上に分子系統解析結果を重ねた点である。布施氏の研究は,以下の4つに大別できる。まず単子葉植物全体の分子系統樹構築に関する研究では, matK遺伝子を用いることによって,rbcL遺伝子で見いだされていた植物分類群間の系統関係を更に詳細に解析した。また,当時混乱していたショウジョウバカマ属の分類を,形態と分子の両面から解析することで明瞭に整理した。そして,キンコウカ科では,ノギランが同科で最初に分岐した植物群で、多くの祖先形質を維持している種であることを示した。その上,布施氏は,植物さく葉標本の学術的価値を深く理解し,先の東日本大震災によって被災した植物標本の復元に積極的に関与,自ら行動し,その実践から得た被災植物標本復元方法をいち早く公表した。この標本復元法は,世界でも類を見ない貴重な研究成果であり,社会的貢献を伴った重要な学術的活動といえる。なお種生物学会では,シンポジウムの講演・ポスター発表を積極的に行い活発な学会活動を展開し,また学会運営にも尽力している。

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