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種生物学会 - The Society for the Study of Species Biology

Last Updated on 05-12-2019

【報告】 第13回片岡奨励賞 選考報告

第13回 種生物学会片岡奨励賞 選考報告

2019年10 17

 選考委員会は,推薦のあった候補者の研究業績および種生物学会での活動について,慎重に調査審査し,最終選考会議を10月15日に行いました。その結果,選考委員の全員一致で,以下の1名に片岡奨励賞を授与することを決定いたしました。なお授賞式と受賞講演は,12月 7日(土)の種生物学シンポジウム会場にて行います。

廣田 峻(東北大)

片岡奨励賞選考委員: 井鷺裕司・川北 篤・西脇亜也(委員長)・吉岡俊人

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廣田 峻氏の受賞理由

 廣田 峻氏は、送粉者との相互作用による花の進化について、キスゲ属植物を題材として研究を行ってきました。キスゲ属植物のうち、ハマカンゾウは昼咲きで無芳香の赤花を、キスゲは夜咲きで甘い香りのある黄花をつけ、それぞれ昼行性アゲハチョウ類、夜行性スズメガによる送粉に適応しています。この2種を交配して作出した雑種を用いた実験集団において、アゲハチョウ・スズメガが花色や花香にどのような選択圧をもたらすのか、訪花観察や花粉一粒ジェノタイピングによる送受粉の追跡を用いて研究してきました。その結果、花香の強さよりも花色の違いが送粉者の選好性に影響し、アゲハチョウは赤花を一貫して選好するのに対し、スズメガは蜜量に応じて日和見的にふるまうことが明らかになりました(Hirota et al. 2012, 2013)。さらに、アゲハチョウとスズメガそれぞれの色覚に基づいた花色評価の結果、ハマカンゾウ・キスゲともネクターガイドとして機能する "UV bullseye pattern" をもつものの、キスゲの bullseye pattern はコントラストがより高く明瞭なものでした。さらに、訪花実験により、スズメガは UV bullseye pattern の明瞭な花を選好することが示されました(Hirota et al. 2019)。この結果から、アゲハチョウは花色自体、スズメガは花の模様という利用する視覚情報の違いが種分化を駆動したことが示唆されました。

 こうした進化生態学的な研究で身に着けた技術を活用して、社会のニーズに応えるための保全生態学的な研究にも取り組んでいます。近年、屋久島の低地照葉樹林帯では、豊かな森を象徴する菌従属栄養植物の新種が相次いで報告され、その価値が認知され始めました。しかし、多くの低地照葉樹林は保全地域に含まれていないため、さまざま攪乱にさらされています。そこで、ベルトトランセクト法による網羅的な植生調査を行い、種多様性ホットスポットを特定しました(廣田ほか2018)。現在、環境省や地元住民との協同で種の保存法に基づく生息地等保護区の指定を目指した取り組みを進めています。

 種生物学会では、2013年に企画した「におい」に関するシンポジウムやポスター発表などの学会活動を積極的に行ってきました。

 以上の研究業績および種生物学会での活動は片岡奨励賞の受賞にふさわしいものです。廣田氏の活躍は、生物の進化研究を志す若手研究者に大きな刺激を与えるとともに、種生物学会のさらなる発展に貢献することが期待されます。

 

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