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種生物学会 - The Society for the Study of Species Biology

Last Updated on 02-11-2020

【報告】第14回片岡奨励賞 選考報告

第14回 種生物学会片岡奨励賞 選考報告

2020年 10月 17日

 選考委員会は,推薦のあった候補者の研究業績および種生物学会での活動について,慎重に調査審査し,最終選考会議を10月15日に行いました。その結果,選考委員の全員一致で,以下の1名に片岡奨励賞を授与することを決定いたしました。なお授賞式と受賞講演は,12月 5日(土)の種生物学シンポジウム会場にて行います。

村中智明(鹿児島大学)

片岡奨励賞選考委員: 井鷺裕司・川北 篤・西脇亜也(委員長)・吉岡俊人

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村中智明氏の受賞理由

 村中智明氏の研究は、時間生物学を専門とし、植物の日長認識機構の基盤である概日時計の研究を行ってきました。実験材料として、特異な生活史と生態をもつウキクサ植物を選択し、その小型かつ平坦な形態と、ホタルルシフェラーゼを用いた発光レポーター技術を組み合わせ、長期間にわたって細胞ひとつひとつの概日リズムを測定する手法を、世界に先駆けて開発しました(Muranaka et al., 2013)。本手法を用いて取得したデータに対し詳細な時系列解析をすすめ、植物個体内においても個々の細胞がある程度独立した時計として振る舞うことを示しました(Muranaka and Oyama, 2016)。また、昼夜刺激によりその独立性が低下することも報告し、昼夜のある自然な条件での解析の重要性も示しました。

 植物個体内のリズム研究の一方、概日リズムの遺伝的多様性の研究も進めてきました。発光レポーターを簡便に植物へ導入する技術を用い、ウキクサ植物の種間・種内の多様性を解析できることを示しました(Muranaka et al., 2015)。現在は、とくに一年生の水田雑草であるアオウキクサについて国内の種内多様性の解析を進めており、概日リズムの周期と花成の日長応答性の間に相関を見出すなど、概日時計の周期の多様化および適応的意義について重要な知見を蓄積しています。その成果の一部は種生物学会のシンポジウムおよびポスターにて発表されています。

 また、アブラナ科多年草のハクサンハタザオを用いた野外トランスクリプトームによる自然条件下での概日時計の挙動の解析も進めています。2時間毎の日周サンプリングを自ら行って取得したデータにより、概日時計関連遺伝子の未知の挙動を明らかとしています。概日時計のみならず、様々な遺伝子の日周変動の季節変化データを高解像度で取得した本研究は、分子生態学分野の重要な基礎データになると考えられます。

 このように、村中氏は自身の専門である時間生物学および分子生物学的手法を駆使して野外植物の生態学・種生物学にアプローチを続けていくことが期待できる人物です。

 村中氏は和文誌編集委員となってすぐに、宮崎のシンポジウムでは和文誌企画をオーガナイズし、現在責任編集者として早期出版を目指して努めています。また、現在も滋賀のシンポジウムの実行委員として積極的に活動しています。

 以上の研究業績および種生物学会での活動は片岡奨励賞の受賞にふさわしいものです。村中氏の活躍は、生物の進化研究を志す若手研究者に大きな刺激を与えるとともに、若手の中心として活躍して種生物学会のさらなる発展に貢献することが期待されます。

 

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